近年、「新札幌は昼飲みの聖地では?」という声を耳にする機会が増えてきました。
実際に、平日の昼間にも関わらず飲食店が賑わっているという印象を持つ人も少なくないはずです。
では、この現象は本当に起きているのでしょうか。
過去の動きやデータ、実際の利用状況をもとに検証してみました。(2026.03.25記)
札幌市厚別区「新札幌(新さっぽろ)エリア」で“昼飲み客”が増えている?その理由を検証
まず、札幌市以外からアクセスしていただいた方に、ご説明します。
この事例検証の舞台は、北海道札幌市厚別区にある「新札幌」というエリアです。
1970年代後半から札幌市の副都心として計画的に開発され、JR新札幌駅は、札幌駅、新千歳空港駅に次いでJR北海道管内で3番目に利用者が多い駅となっています。
このJR新札幌駅の駅ビル「Duo」をはじめ、隣接する商業施設「サンピアザ」、「BiVi新さっぽろ」、「新さっぽろアークシティホテル」、「サンピアザ水族館」や「地下鉄新さっぽろ駅」、「新札幌バスターミナル」は、全て連絡通路や地下道で結ばれており、外に出ることなく移動できる大きな複合施設として機能しています。
【関連リンク】
●駅前に都市機能が集約した全天候型万能都市「新札幌」とは【北海道札幌市厚別区】/2025年12月3日
東京や大阪の下町にあるような、昼間から暖簾(のれん)を掲げる居酒屋は、計画的に整備された新札幌にはもともと皆無でした。
一方、古くからの下町に限らず、今や全国的に広がりを見せる「昼飲み」。
この現象は、かつては昼酒の習慣とは無縁だった新札幌でも顕著に現れています。
再開発で誕生した歴史の浅い商業エリアに、いかにして「昼飲み」が新しい文化として定着していったのか。その具体例を挙げて検証・解説します。
新札幌の「昼飲み文化」は2020年から一気に動き出した
新札幌で「昼飲み」が意識され始めた大きな転機は、2020年と考えられます。
この年、「昼飲みの聖地」を掲げた居酒屋「恵美寿商店新札幌店(現 恵美寿商店シンサツBLOCK店」が登場し、さらに名店街には“角打ち”スタイルの店舗も出店。
同時期、コロナ禍による営業時間短縮の影響もあり、飲食店側が新たな集客方法を模索していました。

画像出典/サンピアザ&デュオ
その象徴が、2020年11月からサンピアザ&デュオで実施された「新さつ ちょい飲み。」キャンペーンです。
初回は15店舗が参加し、1000円前後で気軽に楽しめる“ちょい飲みセット”を提供。その後も、継続的に開催されています。これにより、「昼間に軽く飲む」というスタイルが一気に広がるきっかけとなりました。
当時はまだ「昼から飲むのは少し後ろめたい」という空気もありましたが、結果的にはこの取り組みが現在の流れを作ったといえそうです。
【関連リンク】
●新札幌に昼飲みできるお店が相次いでオープン2020年【札幌市厚別区】/2020年7月18日
●「新さつ ちょい飲み。」サンピアザ&デュオの15店舗で2021年1月31日まで【札幌市厚別区】/2021年1月21日
●新札幌で昼から「飲み放題」が選べるお店【札幌市厚別区】/2023年2月5日
全国的にも“昼飲み”は増加傾向
この流れは新札幌だけのものではありません。
「日本食糧新聞」の報道では、2025年9月の記事で「週末や休日に早い時間帯から飲む人が、右肩上がりで増加している。」という傾向が指摘されています。
つまり、新札幌の動きは、全国トレンドと一致している現象とも考えられます。
【参照リンク】
●column:飲酒業態の未来を探る 「客単価アップ」傾向 昼飲み文化拡大も(2025年9月1日/日本食糧新聞)(当サイト外)
2023年以降、環境がさらに後押し
2023年に開業した商業施設「BiVi新さっぽろ」では、テイクアウトした飲食物を館内スペースで楽しめる仕組みが整い、時間帯にとらわれない飲食スタイルが広がりました。
「BiVi新さっぽろ」2階の屋内公園「BiVi PARK」からモバイルオーダーで、屋内公園を囲む飲食店からのテイクアウトを楽しむというスタイルは、待ち合わせの合間の“ちょい飲み”を促すことに繋がりました。
また、屋内公園があることで、冬期間でも暖かな場所で「ビアガーデン」が企画されたりと、日中でも飲むことへのハードルが下がっています。
これにより、「ランチ+軽く1杯」、「買い物ついでに短時間飲み」といった利用がより自然なものになっています。
【関連リンク】
●祝オープン!BiVi新さっぽろ写真集_屋内公園と充実した飲食街【札幌市厚別区・新札幌】/2023年12月2日
●BiVi新さっぽろ 暖かな屋内公園でデジタルお花見2025年4月18日から【札幌市厚別区・新札幌】/2025年4月4日
SNS投稿から見える“明らかな変化”
持ち帰った仕事を終え、新札幌で1人昼飲み。
そうか、今週は水曜日が休みなのか。まずは英気を養って、月火頑張ろう。 pic.twitter.com/hYWVU3WKlc— とものり (@itouni) February 8, 2026
では実際に利用者は増えているのでしょうか。
SNS上の新札幌エリアにおける“ちょい飲み”、“昼飲み”に関する投稿を確認すると、明確な変化が見えてきます。
◆2015〜2019年:投稿はごく少数
◆2020年:ちょい飲み関連の投稿が出現
◆2023年以降:昼飲み投稿が増加
◆2025〜2026年:日常的な利用として定着
(特に2026年に入りこれまで以上の増加がみられる。)
※エックスのAI機能「GROCK」による集計より
特に最近では、「1人で昼飲み」、「新札幌で軽く一杯」、「昼から飲めるのがありがたい」といった投稿が目立ち、“特別な行為”から“日常利用”へ変化していることが分かります。
お昼でーす♪
天気:曇り☁️
気温:20℃ 風速6m(南南東)
昨日は釧路から移動し、夕方、新千歳空港到着。
夕食は新札幌の回転寿司でちょい飲みセット他8皿で済ませました😋今日は、昼前に北海道神宮に参拝し、近くのKFCで昼食中。 pic.twitter.com/Zy4rGCgBPe
— デリペイ2025🦑2026/1月/2月は北海道 (@DeliPay2021) September 25, 2025
実際の様子は?動画でも確認できる
当記事で分析した時代の空気をYouTuberさんたちは、的確にキャッチし、動画配信でリポートしています。
<どさんこ な おとこたちチャンネル>
<シニアの楽しみ 旅 暮らし>
<north ken channel>
<コタちゃんねる>
複数の動画で共通しているのは、昼の時間帯でも一定の来客がある、一人利用・少人数利用が多い、という点です。
映像からも、“昼から飲むことが特別ではない空気”が伝わってきます。
なぜ新さっぽろで定着したのか?
ここまでの情報を踏まえると、理由は大きく3つ考えられます。
① 商業施設主導の「ちょい飲み文化」→ 安価・短時間・気軽
② コロナ禍による生活スタイルの変化→ 夜中心から昼分散へ
③ 施設構造(駅直結・回遊性)→ 「ついで飲み」がしやすい
検証
ここで、Googleの「混雑状況」機能を活用して、日曜日の時間帯別の混雑度のグラフから、昼飲みの動向を探ってみましょう。
▼15時に利用客のピークを迎える居酒屋「恵美寿商店 シンサツBLOK店」
一般的に飲食店のピークはランチの12時台か、夜の18時以降に集中します。しかし、新札幌の「恵美寿商店 シンサツBLOK店」では、日曜日のピークが15時に現れています。
この時間帯は通常、食事需要が落ち着く“谷”であり、ここにピークが形成されるのは、食事目的ではなく、長時間滞在を伴う飲酒行動、すなわち「昼飲み」の存在を強く示唆する現象といえるでしょう。
▼同じ店なのにピークが違う――エリアで変わる昼飲みの実態
さらに検証を進めるため、「昼飲みの聖地」を掲げる同一チェーン内での比較を行いました。
興味深いのは、異なるエリアで営業している「恵美寿商店」の場合、新札幌のように15時頃にピークを迎える現象は起きていないのです。
対象としたのは、新札幌エリアの「恵美寿商店 シンサツBLOK店」と同系列チェーン店、「恵美寿商店 白石店」および「恵美寿商店 札幌西口店」の2店舗です。
いずれも同様に昼飲みを前提とした業態で営業していますが、混雑の時間帯構造には明確な違いが見られました。
白石店および札幌西口店では、日中の利用者数は12時頃から20時頃まで大きな山を作ることなく、ほぼ横ばいで推移している。一定の需要はあるものの、特定の時間帯に集中する傾向は見られず、「昼飲みはできるが、ピークを形成するほどではない」状態といえます。
一方で、さきほど見ていただいた新札幌の店舗では、15時前後という本来ピークになりにくい時間帯に明確な混雑の山が確認されています。
同一ブランド・同一業態でありながら、エリアによって利用時間帯の分布が異なるという事実は、昼飲み文化の定着が単なる店舗側の仕掛けではなく、「地域ごとの利用行動」に強く依存していることを示しています。
つまり、昼飲みを提供しているだけでは不十分であり、実際にその時間帯に人が集まり、ピークとして可視化されてはじめて、「文化として定着している」と言えるのではないでしょうか。
この観点から見ると、新札幌で見られる15時ピークという現象は、単なる偶然や一時的な流行ではなく、他エリアとは異なる利用習慣が形成されている可能性を強く示唆しています。
▼隣接する江別市の事例と比較
新札幌エリアにおける「昼飲み文化の定着」を検証するにあたり、さらに隣接エリアとの比較を試みました。
比較対象としたのは、「山の猿 江別店」。江別市は、新札幌エリアがある札幌市厚別区にあり、厚別区の人口約12万人に対し、江別市も約12万人の人口を有しています。「山の猿 江別店」は、江別市中心部に位置し、同市内では数少ない昼飲みが可能な居酒屋です。
しかし、日曜日の混雑傾向を見ると、新札幌とは明確に異なる特徴が確認できます。ランチ営業開始から15時頃までは利用者数は大きく伸びず、ほぼ横ばいで推移。その後、夕方にかけて徐々に来店が増え、19時頃にピークを迎える、いわば「典型的な夜型の居酒屋動線」となっています。
この比較から見えてくるのは、「昼飲みが可能であること」と「昼飲みが実際に行われていること」は別次元の話であるという点です。
江別のように昼飲み対応の店舗が存在していても、利用実態が夜間に偏る場合、それは文化として定着しているとは言い難いのではないでしょうか。
対して新札幌では、時間帯構造そのものが変化し、本来ピークではない時間に人の流れが生まれている。これは単なる流行や一過性の需要ではなく、生活圏の中に「昼から飲む」という選択肢が組み込まれている状態、すなわち文化として根付きつつある段階と考えられます。
こうした点を踏まえると、昼飲み文化が全国的に広がりつつある現在においても、その定着度にはエリア差が存在し、新札幌は札幌圏の中でも特にその傾向が顕著な地域である可能性が高いのではないでしょうか。
「昼飲みの聖地」と称される背景には、単なるイメージではなく、こうした時間帯別の利用実態の違いがあるのかもしれません。
まとめ
本検証記事では、新札幌の立地や商業施設の取り組み、新札幌エリアと周辺地域、さらに同一チェーン内での比較などを通じて、昼飲みの利用実態を分析しました。
その結果、「昼飲みが可能であること」と「実際に昼飲みが行われていること」との間には明確な差があることが見えてきました。江別エリアでは従来通り夜間にピークが集中する一方、新札幌では15時前後という本来ピークになりにくい時間帯に利用が集まる現象が確認されています。
さらに、同一業態である恵美寿商店 白石店や恵美寿商店 札幌西口店では同様のピークは見られず、この違いが単なる店舗の特性ではなく、エリアごとの利用行動に起因する可能性が高いことも明らかになった。
では、なぜ新札幌ではこのような現象が生まれているのか。
背景には、複数の要因が重層的に作用していると考えられます。まず、新札幌駅周辺はJR・地下鉄・バスターミナルが集積する交通結節点であり、人の滞在と乗り換えが日常的に発生するエリアである点。さらに、2023年に開業したBiVi新さっぽろの存在により、飲食・滞在機能が一層強化されました。
加えて、従来からサンピアザやデュオで展開されてきた「ちょい飲み」キャンペーンのように、“昼間に軽く飲む”という行動を後押しする仕掛けが継続的に行われてきた点も見逃せません。
これらの条件が組み合わさることで、新札幌では単なる飲食需要を超え、「昼の時間帯に飲酒を伴う滞在を選択する」という行動が自然なものとして受け入れられている可能性があります。
昼飲み文化は全国的に広がりつつありますが、その定着度は一様ではありません。今回の検証結果を見る限り、新札幌はその中でも、時間帯構造に明確な変化が現れている数少ないエリアの一つといえるでしょう。
「昼飲みの聖地」と呼ばれる背景には、単なるイメージではなく、交通・商業・プロモーションが複合的に作用した結果として生まれた、地域特有の利用行動の蓄積が存在しているのかもしれません。
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コメント
すごい興味深いデータをありがとうございます。
そういえば以前錦鯉かタカトシの番組でも、昼から酒屋の立ち飲みやってましたよね。
2012年頃はラフィラのレストラン街で昼飲みしてました
当時は飲み放題120分980円とかだったな